ブラジルのセムコという会社をご存知ですか?日本では、「奇跡の経営」という書籍でそのあり方が紹介されているのですが、企業なのに組織図がない、階級がない、人事部がない、トップには戦略がない・・・社員は会社にコントロールされることなく自分自身の才能を活かせる仕事を見つけ、働く。結果として、売り上げは6年間で3500万ドルから2億1200万ドルへと急成長し、社員の離職率は限りなくゼロに近い。

そんなセムコ社を経営するリカルド・セムラー氏のお話を伺う機会に恵まれました。様々なエピソードが印象に残ったので、何回かに分けてお届けします。

まず、全編を通して私が彼から感じたのは、とにかく「前提がない」ということです。

例えば「キャリアアップの仕組みってどうなってますか?」と聞かれれば、

え〜っと、
「人生が進んで行く=上に行く」
「成長していないとおかしい」
という前提がおかしくないですか?
自然界を見渡してみても、成長し続けている生き物は存在しません。ガン細胞でさえ、最後は宿主を殺してしまうことで成長は止まるでしょう。

セムコでは「成長」はしなければならないものとしては位置付けられていません。それぞれが「約束したことを提供する」ことが大切で、それ以上でも以下でもないのです。成長してもいいし、しなくてもいいし、本人が生きたいように生きればいい。結局あなたはどうしたいの?ってことだよね。

「どうしたら、社員の可能性を信じられるようになりますか?」と問われれば、

そもそも、自分がその人に期待したものがなんであったか、あるいは自分がその人を信じるかどうかって、「その人が自分の才能を活かして働くかどうか」に関係なくないですか?信じてようと、信じていまいと、社員は自分の人生を生きているわけだよね。

・・・

いやー、本当に、巷でよく言われていること、「当たり前」として考えられていることのことごとくが、セムラーさんにとっては「当たり前ではない」のだろうということがよくわかりました。当たり前ではないから、全く新しい発想で今までにない取り組みをすることができるし、本当に大切なことはなんなのか?に向き合い続けていられる。

では、どうやったらこのような「前提のない考え方」ができるようになるのか?

セムラーさんの話からもらったヒント:

それは「なぜ」を3回聞くこと。
1回目は、普通のそれらしい答えが出てくる。
2回目は、ちょっと苦しい。
3回目は、うやむやになることがほとんど。
3回問うことで本質的に大切なことにたどり着く。

「当たり前」に囲まれて生きるのはとてもラクだけれど。
「今までの当たり前」だけを見ていたら、本質を見失う。

私の「当たり前」はなんだろう?

「奇跡の経営」 のリカルド・セムラー氏の衝撃(2)へ続く